2013年5月21日火曜日

村上春樹

休日

昼前に起床し、洗濯をする。
洗濯物ができ上がるのを待ちながら、パンとおにぎりを頬張る。
視線の先はニコニコ動画のスポーツ動画。

洗濯物を干して出かける。

今日は涼しい場所で読書をしよう。
村上春樹の文庫本を買ってから、まだ1ページも読んでいなかった。

村上春樹は好きではない。
村上春樹は、というよりも、ハルキハルキと騒ぐ世間の風潮が好きではない。

しかし僕は作品を読んだことがなかった。

知り合いのハルキストの薦めで、初めて村上春樹の小説を買った。

それを今日は読んでみる。

スターバックスで村上春樹を読むという、「いかにも」な所業に臨もうかと思った。

しかし、近所のスターバックスは付近で工事をしていた。
騒音が酷いので自転車で通りすぎた。

すぐ近くの大垣書店に入る。
併設のカフェでアイスコーヒーを注文し、席につく。

大垣書店にいながら、ブックファーストのカバーを巻いた文庫本を広げた。

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を読み始めた。

2012年11月23日金曜日

混浴温泉世界、別府。(4)


混浴温泉世界、別府(3) 続き





















【 4日目 】


滞在最終日。

まずは宿をチェックアウト。お世話になりました。


今朝も、別府に来てからのルーティンに移る。

まずは「カナンベーカリー」へ。

……

日曜定休……

よもぎあんパンが食べたくて仕方がなかったのだが……

渋々、別府駅中の小洒落たパン屋さんへ。

パンを買い、海門寺公園で食べる。

美味しいが、最終日をカナンベーカリーで締められない悲しさもひとしおだ。


今日はまず、platform02に行き、「水図」をじっくり拝見する。

もう一人の作者のブブさんが笑顔で出迎えてくれた。

この「水図」、人の記憶に引っかかる、不思議な作品だ。


続いて、伊藤存さんの作品を拝見しに、platform05へ。

入り口で、混浴温泉世界のTシャツを着た受付のお姉さんが俺を見るなり

「あれ!?昨日、トークイベントにいました?」

このお姉さん、昨日、俺の後ろにいたらしい。

そういえば、質問タイムの時に頭の後ろから軽快な声が飛んでいたような。

ああ、この人がアベリアさんか(←事前に噂を聞いていた)


伊藤存さんの作品は、刺繍だ。

キャンバスに縫ってある糸、近くで見れば糸なんだけど、距離をおいてみると水墨画のような絵になっている。

また、カラフルな松ぼっくりも置いてあり、これは別府に住む96歳のおじいさんの作品なんだとか。

platform05を出て、存さんとアベリアさんと話していると、そのおじいさんが金色に塗り上げられた自転車に乗って登場。

一同爆笑。噂をすれば影である。


存さん、アベリアさんに別れを告げて、また歩く。

もう会うこともないかもしれないが、またどこかで会えるような気もする。そんな不思議な親近感があった。


腹が減ったので、駅前のお店「とよ常」へ。

ずっと食べようと思っていたのだよ!特上天丼!

店内に入ると、あらっ、3年前に友達と夕食を食べに来たお店じゃないか。

なんたる偶然。そして天丼をペロリ。うんまい。


昼からは、またまた創平さんとブブさんのトークイベントへ。

昨日より詳しい話が聞けるそうだ。



思いの外、話が脱線しまくりだったが、それはそれで良かったことにしよう。


お次は、友人と合流して明礬温泉へ。

亀の井バスに揺られて30分ほどで到着。

うむ、明礬へはやはり自転車で行くべきだ!


温泉に入った後、またしても岡本屋売店へ。

メニューに抹茶プリンが加わっている!

蒸したまごと一緒に注文。

この蒸したまごの価格が1個100円。納得がいかんかったが、渋々購入。

だって、温泉の蒸気に置いておいただけでできる蒸したまごが100円って…ねえ

ぶちぶちと文句を言いながら、殻を割ってパクリ。

あっ……これは100円の価値あるわ、ごめんなさい。

むちゃくちゃ美味しかったので、帰りの電車で食べる用に、もう1個購入。気分ホクホク。


夜が始まりかけた明礬からの帰り道は雨。

薄暗い鉄輪の側溝から湯煙がもくもく。

湯煙に照明が当たって、とても不思議な光景であった。


別府に着いた。

僕はそのまま特急に乗って帰る。

現地集合・現地解散の友人たちに別れを告げて、改札を通る。


特急ソニックに乗りたかったが、違う車両のようだ。

それにしても、別府駅の「べっぷぅ~↑べっぷぅ~↑」というアナウンスにはつい笑ってしまう。

いろいろと愉快な街だった。


特急乗車中に、お弁当と蒸したまごを食べた。

電車の中で蒸したまごなんて、もう板東英二を馬鹿にできない。


小倉で新幹線に乗換えて、一気に京都へ。

こうして別府への小旅行が終わった。


かなり駆け足で書き上げてしまったので、ちゃんとまとめよう。







混浴温泉世界、別府。(3)


混浴温泉世界、別府(2) 続き



湖月 餃子


















【 3日目 】


今日も朝10時くらいから活動し始める。


まずはやはりパン屋さんへ。ここ、「カナンベーカリー」というらしい。

店内は狭くて、数人のおばちゃんが奥の工房でパンを作っている。

今日もパンを2つ購入。よもぎあんパンもリピート。


そして海門寺公園まで移動してから朝食。今日は猫がいない。


食後、お金を下ろしに駅のファミマへ、昨日ワインバーまでハシゴした友人と偶然会った。

友人といっても、僕より40年近く年長である。というか大学の教員である。

まあ僕は大学を卒業したし、気兼ねない人だし、友人としておく。


「今日は浜脇の方に行ってみましょう」

昨日、ワインバーの若い店員さんから別府の話、とりわけ浜脇の話を聞いていた。

そうして2人での行動が始まった。


別府市街地のアーケードを駅前通りから遠ざかる方向、南へ向かうと、どんどん風景が廃れていく。

飲食店の数が減っていき、シャッターが降りた店がチラホラ。

まあ、そもそも、日が出ている内の別府市街地はどこもまだ眠っているのだが。(それでも風俗店は元気に営業中)


しばらく南へ歩くと、アーケードがなくなる。

松原という地名に入ると、住宅が軒を連ねる。松原公園では子供達が遊んでいたり、おっさんが談笑していたりする。

この辺にある「六盛」というお店の冷麺がうまいらしい。バーテン情報。


さらに歩き進む。

背の低い住宅が並ぶ風景は、無防備で、空気が緩く、めまぐるしく進む日本社会とは切り離されたような世界だ。

なるほど、大分麦焼酎「二階堂」の世界である。


神社があった。狭い敷地内には立派な境内、それに能舞台まである。

神社には神様が祀られていて、人はその神様に何かを祈願する。

海が近いこの町の人々は、何をお願いしていたんだろうか。


川に突き当たった。「朝見川」というらしい。

別府湾に直結しているため、潮の流れが川を逆流している。


浜脇エリアに入った。

昔、別府が栄えはじめた頃はこの辺りが別府の中心地だったらしい。

温泉を中心とした歓楽街がここにあったんだと。遊郭ももちろんあったらしい。

今の浜脇は、別府に似合わないタワーマンションと寂れたショッピングモールがあるくらいだ。


僕ら2人も、元遊郭という木造の建物を覗いてみたりした。

混浴温泉世界の作品があるらしいのだが、どこにあるかよくわからない。


浜脇の「場末感」はハンパない。

しかし、少し歩けば、車がビュンビュン行き交う国道10号線に出る。

ここに出るとタワーマンションが馴染む風景に顔色を変える。


そんな風景はつまらんので、浜脇中学校へ向かう。

浜脇中学校は少し高台にあり、ここからの眺めが別府三景に入るらしい。バーテン情報。


石段を登り、浜脇中学校へ。土曜日であるが、部活があるため生徒はたくさんいる。

高台から別府を臨む。

地面から生えているタワーマンションが邪魔だが、いい景色だ。


山の方を見れば、昨日のコンクリート橋が遠くに見える。

海の方を見れば、まあ、果てしなく海がある。南方には大分市の工業地帯が見える。

山から海へかけての斜面に別府が広がっている。

狭いような、広いような。


その後、東別府駅から電車に乗って、別府へ戻った。

水戸岡鋭治デザインの車両は素晴らしい。


昼食は2人で、竹瓦温泉の横にあるtakeyaへ

だんご汁定食をいただく。美味しい。


そこで一旦解散。

僕はselect beppu→SPICAをぶらぶら。

道中、紙屋温泉が目に入ったので、そのまま温泉へ。

ここも100円。東京から来たという観光客とポツポツ話す。

しかし、熱い!紙屋温泉は熱かった。

風呂を出た後も熱が引かない。外の空気に触れて放熱しようと思ったら、紙屋温泉のおばちゃんに話しかけられる。

「混浴温泉世界」目当てで来たと言うと、「それなら、ここの2階でなんかしちょるよ」と。

熱が引かぬまま2階へ、畳敷きの大きな部屋に若い男の人と、謎めいた作品がある。

説明を受けてひと通り拝見したが、アートというか、文化祭の展示みたいだった。

おばちゃんにお礼を言ってさよなら。


「ジェノバ」のジェラートを海門寺公園で食べた。

なんて素晴らしい時間だろうか。そして海門寺公園という空間も素晴らしい。

わりと真新しいきれいな公園だが、海門寺や別府タワーが見えて、新しさと古さが視界の中で同居する空間だ。


次はコージーコーナーという喫茶店で、ジンジャーチャイをいただく。

ジンジャーチャイ、温かくて、美味しすぎる。

風呂あがりにジンジャーチャイを嗜むことは、ハイレベルな至福だということが分かった。



時間は夕方。

17:30からの創平さん達のトークイベントを拝聴。

相変わらず、創平さんの話は興味深いという意味でおもしろい。


その後、「湖月」へ。

ここは「餃子」と「ビール」しかメニューがない。餃子うまい。


そして「スナック優子」へハシゴ。

優子さんは実に素敵な女性である。


この日の夜に別府タワーでTOWA TEIのライブイベントがあるそうな。

踊った。

イマイチ、箍を外し切れなかったが。


そしてまたまた「スナック優子」へ

入ると、狭い店内に「混浴温泉世界」の関係者がズラリ。

いい年した大人が、何かを話しては爆笑しながら立ち飲んでいる。

楽しそうだ。


午前2時くらい、宿に帰って就寝。

二段ベッドの上の階には、巨大な外国人が大きないびきをかいて寝ていた。









2012年11月19日月曜日

混浴温泉世界、別府。(2)


混浴温泉世界、別府(1) 続き


楠銀天街
楠銀天街


















【 2日目 】


別府へは一人で来たが、すでに友人が別府に滞在しており、もう一人の友人も夕方には到着する。

この人達を友人と呼んでいいものか、微々たる躊躇はあるが、とりあえず「友人」としておく。



今日も朝から一人行動がはじまる。

ゲストハウスの自転車が無料で借りられるらしいので、そのサービスに甘んじることにした。

真っ赤なママチャリ。

この日、僕の冒険に付き合ってくれるママチャリである。


手始めに、昨日と同じ近所のパン屋さんでパンを2つほど買い、昨日と同じ公園で朝食タイム。

熟考の末選んだ、よもぎあんパンが大当たりだった。

昨日と同じ、この公園は「海門寺公園」というらしい。公園の隣には「海門寺温泉」という、別府では比較的きれいな銭湯がある。


よもぎあんパンのよもぎの香りを鼻から味わっていると、小麦の方の匂いを嗅ぎつけたハトがわんさか寄ってきた。

その図々しい嗅覚にスゲーナと感心していると、のそのそと一匹の猫が近付いてきて、ハトを追いやってしまった。

こ、こいつ、ハトから俺を守ってくれたのか……

とか感心しつつ、猫とともに朝食を終える。


海門寺公園
海門寺公園
















よし、鉄輪にでも行ってみるか!

鉄輪には昨日も行ったが、他に行く場所も思いつかないので仕方ない。

自転車で行くという過程自体が、ふだん自転車乗りの自分には大きな意味をもつのだ、ということにした。


鉄輪は別府市街地からはそれなりに距離があり、結構な坂を上らなければ、たどり着けない。

亀の井バスに揺られていれば楽チン20分ほどで着くが、ママチャリを漕ぐのは苦行だった。

天気も良かったので、暑い。

背中の熱を逃がすためバックパックを下ろし、トレンチコートを脱ぎ、じわじわと汗をかきながら、せっせと坂を上った。

しかし天気が良いので、その苦行がむしろ気持ちよかった。

晴れていればそれでいいと思いがちなのは、人間の自然な思考か、瀬戸内生まれの性か。


ようやく鉄輪に着いたが特にすることもないので、観光案内所に駐輪して、なんとなく海地獄へ。

3年前に来た時は、律儀に全ての地獄を拝んだが、今回は1つでいいや、と。


海地獄
海地獄


















中で親子連れの写真を撮ってあげた。喜ばれた。いい気分。

かぼすスカッシュを買って飲む。いい酸味だ。

足湯につかる。熱いので、つかった部分が赤くなる。なんかおもしろい。

海地獄を出て、近くのお店で1個50円の蒸したまごをいただきながら、次の行動を考える。

旅手帖beppuをパラパラめくりながら、2つめの蒸したまごの殻にヒビをいれる。

(この蒸したまごが無性にうまい。)


どうやら「岡本屋売店」の蒸しプリンが名物らしい。場所は明礬温泉。地図によれば鉄輪のさらに上、地図の上の方のはしっこに書いてある。

遠いのか……?

また悩みながら、ママチャリが待っている場所へ向かう。別府に戻ろうかなあ。

すると道の脇に停めてあったタクシーの運転手さんに話しかけられた。


「別府は明礬温泉が穴場っちゃね、岡本屋のプリン食べんと、それから、も少し行ったら展望台もあるんよ」

「自転車で来たんか!?そりゃ~ちょっとキツイわなあ」


みたいなことを言われ、ああ、やっぱプリンは無理か(ヽ´ω`)と諦める。

観光案内所に戻り、一応、そこのおばちゃんに自転車で明礬温泉に行けるか食い下がって聞いてみる。


「歩いたら30分くらいかなあ」

「お兄さん若いから行けるんじゃない?」


話を聞けば、あれあれ?行けるんじゃね?……行こう。


持ち前の楽観視に任せて鉄輪を出る、ママチャリを漕ぐ、上る。

リハビリセンター横の咲いてない桜並木を通り過ぎ

山の間に架かる、ウルトラマンが走り高飛びでも出来そうなコンクリートの橋の下を通り過ぎ

だんだん人気がなくなるけれど車は通る、曲がりくねった坂道をひたすら上る。



別府明礬橋
別府明礬橋


















「明礬」という単語がちらほら見えてきた。

キツイ坂をぐいんと上ると、そこに「岡本屋売店」があった。

一度諦めた場所に辿りつけた感動はひとしおだ。


早速、地獄蒸しプリンを目当てに中に入る。

時間は昼過ぎ、そういえば昼食もとっていなかった。

メニューに「蒸し温玉ごはん」というのがあったので、プリンとともに注文。


平日の昼過ぎであっても、店内はそこそこ人が入っていた。

日が差すカウンター席で温玉ごはんをいただく。うまい。

席においてある地元産のかぼす果汁をかけてみた。うまうまい。

そして、蒸しプリンもぺろり。普通のプリンと何が違うのか、自分にはわからなかった。


地獄蒸しプリン
地獄蒸しプリン



















岡本屋売店という目的は果たしたが、ここまで来たんだから明礬温泉を経て、展望台まで行こう。

ママチャリにまたいで、また上る。


白濁湯のイメージがある明礬温泉には入らず。

途中、「湯の花」という明礬の入浴剤をつくる、伝統的な藁葺き屋根の施設なんか見たりした。


そしてママチャリは上る上る。

おそらく時速10キロも出ていなかったんじゃないか。ひたすら重力と闘いながら坂を上った。


ようやく上り坂が終わると、ずいぶん開けた土地が。入り口らしき所に警備員が2人立っている。

どうやら自衛隊の演習場らしい。ふーん。

道を挟んで反対側、もうちょっと行った所に展望台の入り口があった。

正確に言うと、展望台、テレビ塔、霊園の入口だ。


自転車にとっては窮屈な車道から開放されて、意気揚々と展望台まで車輪を滑らせた。

着いた。


目前に広がる別府湾。

港にさんふらわあが停まっている。小っさ。

鉄輪からは湯けむりが幾本も立ち昇っている。

手前の山の中にはAPU(立命館アジア太平洋大学)がある。

タクシーのおっさんは、ここから四国も見えると言っていた。

見える、と自分に言い聞かせれば、水平線上に見える、気がした。


展望台には他にも何人か人はいたが、自動エンジンのついていない乗り物は、自分の真っ赤なママチャリだけだった。

景色にも飽きたので、山を下ることにした。

景色ではなく、今まで山を登ってきた自分の頑張りに別れを告げて、車輪を転がす。


帰り道はあっという間だった。

ものすごいスピードで下り坂を滑り降りる。車道を我が物にして、別府の風を切り裂いていった。


およそ5分もかからず鉄輪に着いてしまった。

行きにかいた汗が帰りで冷えてしまったので、風呂を探そうと観光案内所へ。

観光案内所のおばちゃんが僕を見つけるなり

「行ってきたの!?」 「ほんとに!?」 と言うので、展望台まで行ってきましたと言うと

「きゃー!」 「すごーいですねー!」 と

おばちゃん相手に英雄のような扱いを受けて、それはそれで気分がよかった。


結局、おばちゃんに教えてもらった幾多の銭湯の中から、「渋の湯」という銭湯を選んだ。

入ると、脱衣所の上の窓が開いていて、ちょっと頑張れば外から丸見えである。

(なんとも別府らしい……)

体を洗い、湯に浸かる。ふええ~

もう一人いたおじさんと、野球の話、京都の話、別府の話なんかをして一緒に銭湯を出た。

別府の地で、裸で、湯に浸かっていると、見知らぬ人でも普通に話せてしまうから不思議だ。


友人2人が別府駅で合流したらしいので、ほかほかの身体でママチャリに乗って鉄輪を去る。

鉄輪から別府までの道中は住宅街を通る。

夕暮れの中、学校帰りの子供や風呂桶を持った親子なんかとすれ違う。

濃厚な別府市街地とはまた違った光景である。

こうして自転車で別府市内を往復すると、別府の街のコンパクトさを体感する。


ぼんやり自転車を漕いでいると、別府に着いた。友人は「platform02」という場所にいるとのこと。

platform02は、明日から作品の展示が始まる場所だ。

ママチャリを宿に返して、夕暮れの商店街の中を急いで歩く。

platform02に着いた。中に入ると見知った顔が幾人かと、見知らぬ顔が幾人か。

奥にいた創平さんは呑気な顔で「やあ、こんな所で会うとはね」なんて言っている。


その後、「select beppu」の店長、園さん主導のもと、友人たちと共に市街地をうろうろ

そして、斯界の人々が日本一美味しい韓国料理屋と口にする「高麗房」という韓国料理屋へ。

うまい。とくに蒸し豚は絶品だ。


二軒目は、「スナック優子」へ

前回の「混浴温泉世界」でインリン・オブ・ジョイトイが作品を出した建物が、今はバーになっている。もともともバーらしいが。(もっと遡ると、ヤり部屋だったらしいが)


三軒目に、ワインバーへ行った後、宿へ。

・・・


2日目、長い1日が終わった。








2012年11月8日木曜日

混浴温泉世界、別府。(1)


11/1~4の間、別府に行ってきた。

目的は様々だが、学生時代に出会った京都精華大学の先生、山田創平氏が出す「水図」という作品を観るため、とした。

夏場から計画していた(別記事 BEPPU ART MONTH 2012)が、早くもその時が来て、もう滞在は終わってしまった。

しかし、滞在中の4日間は時間がゆっくりと流れて、とても充実した日々だった。


これはその回顧録である。個人的な。






【 1日目 】

正確には0日目から。

17時終わりのバイトを即行で切り上げて、17:20烏丸発の通勤快速に飛び乗った。

19時過ぎ大阪港発のフェリーに乗らなければ、いきなり旅が終わってしまう。

なんとかトレードセンター前まで着いて、諸手続きを済まし、フェリーに乗り込む。


いちばん安いツーリスト(雑魚寝の相部屋)に荷物を下ろし、別府に着くのを待つ。

フェリーさんふらわあ、これくらい大きなフェリーに乗るのは初めてかもしれない。


船内レストランでサンマをいただく。隣の席のおじさんは1Lのパック酒を持ち込んでいる。

ロビー設置のテレビで日本シリーズを観る。数人のおじさん達と熱を共有する。

日付が変わりそうな頃、デッキに出てみる。風が強い。偶然、瀬戸大橋の下をくぐるタイミングだった。圧巻。

部屋に戻り、寝る。隣のおっさんが近づきすぎてキモかったが、我慢して寝る。







朝7時、別府に着いた。

朝日にまみれて散歩。今日泊まるゲストハウスを覗いて、さて、何しよう。

とりあえず、近くのパン屋さんでパンを買い、別府タワーが臨む広くてきれいな公園でハトと一緒に朝食。

温泉にでも入ろうかと思ったが、タオルを忘れるという失態に気づく、別府に来といてだ。

やむなくトキハというショッピングセンターでタオルを買った後、バスで鉄輪へ。



鉄輪。「かんなわ」と読む。

別府八湯の一つ鉄輪温泉、そして地獄めぐりがある観光地だ。

この日は平日ということもあってか、観光客はさほどいない。

観光客の一人である僕は、観光案内所で温泉を紹介してもらい、旅館の通り湯へ行くことに。

ちょっと坂を上って、「東屋」という高そうな旅館へ。鉄輪が一望できる温泉を500円で独り占めした。

温泉、全裸、高台、景色一望、一人、昼間、と、開放感MAXのヘヴン状態。

気持よすぎた。


その後、旅手帖beppuに載っていた勝太郎食堂へ。拳大のおはぎを2つ胃袋に収めた。ちょっと後悔。

そういえば、ここ鉄輪、というか別府には猫が多い。

蒸し湯温泉の前で、太った灰色の猫をひとしきり撫で回した。

そして歩いて別府に帰ろうとするもリタイア、途中でバスに乗る。


別府に帰って、夕方、ゲストハウスにチェックイン。昼間の疲れで寝てしまう。起きたら20時。

食事を求めて商店街へ。賑やかで昼間とはまったく顔色が違う。

「千と千尋の神隠し」の、あの街を思わせる別府市街地。


結局、駅前のお店で日本シリーズを観ながらとり天定食をいただき、ゲストハウスに戻って寝た。


今思い返すと、わりとあっさり目の1日目だった。







2012年10月8日月曜日

不思議の街、天王寺と飛田新地


いやらしくない風俗のお話


タイトルなし
タイトルなし / titanium22




世は三連休。

とくにすることもないので、部屋で大人しくしていようと思ったが

18時ごろ、大学時代の友人に呼ばれて天王寺へ。

普段は京都に引きこもっていて、大阪は梅田より南に行くのは、5月にミスチルライブで京セラドームに行って以来というインドアっぷり

いや、イン洛っぷり?

天王寺も1年以上ぶりである。


待ち合わせの阪急梅田紀伊国屋さんで、木爾チレンの『静電気と、未夜子の無意識』を探すも、棚に無し…

なんでや!検索端末には「在庫状況◎」って表示されてたやん!


さて、

21時。

この日は友人の散策メニューにより、いったん日本橋へ。

日本橋で風俗店のひやかしをして、お姉ちゃんパネルを30人分くらい拝見。

ぼくちん風俗ははじめてなので友人&店員のテンションについていけず、写真もぜんぜんピンとこない。

パネルに写っているお姉ちゃんは、リアリティがなくて全然興味がわきませんでした。

ヘラヘラと苦笑いを顔に貼っつけた僕を連れて、友人は南へ。


日本橋から天王寺まで徒歩で向かったわけですが、この道中が案外、おもしろかった。


お寺の脇にある、清水の三年坂を思わせる趣きのある坂道

京都と違うのは、その背景にラブホテルのネオンが輝いていること。


天王寺駅の北にある美術館。

その敷地内を通る道は、緑にかこまれて、空気が落ち着いていて、天王寺にもこんな所があるんやなあ、と思わせた。

(この辺りは、あいりん地区のイメージが個人的に強かった)

まるで東京の上野みたいだった。

上野と違うのは、西の夜空に通天閣が顔を出していたこと。

ああ、ここは大阪なんだと確認できるこれ以上のものはないでしょう。(ちなみにこの日の通天閣は、黄色い光の縞模様)


あとは、SHIPSのお洒落な建物の真正面にラブホテルが位置していたりと

京都に引きこもっていた僕には、いろいろと刺激的な街だった。

京都の碁盤の目と違って、ナナメの道が所々に存在する、そんな普通のことすらも新鮮だった。


さてさて、

天王寺駅を南にいって、閑静なマンション街をうろうろ。

Googleマップさんによれば真っ直ぐのびた道を進めばあの街に到着するはず……

しかし一本道は突き当りに。

「あれー?この辺なんやけどなあ」

と、その時、突き当りに見えた道の足元に階段を発見。

マンション街のいちばん端っこに、まるで舞台を降りるかのような階段があるのだ。

ま さ か

夜の23時半、好奇心と手をつないで階段を降りた瞬間、あの街があらわれた。

飛田新地だ。


Tobitashinch / 飛田新地
Tobitashinch / 飛田新地 / titanium22



<飛田新地とは>
飛田遊郭(とびたゆうかく)は、大阪市の遊郭、赤線である。通称は飛田新地(とびたしんち)。大正時代に築かれた日本最大級の遊郭と言われた。 (Wikiより引用)



目前で僕らを誘う街は、さっきまでいた新興マンション街とは明らかに空気が違っていた。

オレンジ色の街灯が、なんとも言えない艶めかしさで街全体を包み込んでいる。


ここは写真を撮ることが暗黙のタブーらしいので写真は撮らず。


早速、ずらりと並ぶお店を、一軒一軒覗いてみるのだが……


レベル高EEEEE!!


噂には聞いていたがこれほどとは。

芸能人レベルかそれ以上の嬢がいるいる。

客引きのおばちゃんの横にちょこんと鎮座する嬢、目が合うとニコッと微笑んでくれる。


可愛EEEEEE!!


もうお店を覗くことに必死で、気付けば道に迷うという

「あれ、ここはもう通ったっけ?」

「この通りはまだ見てないんちゃう?」

下心は道を迷わせる。これ、人生にも当てはまりそう。


30分くらい、好奇心と僕と下心と、三人四脚で街を徘徊した。

お金があれば一度はサービス願いたい。いやマジで。

日本橋の風俗店ではピクリとも動かなかった性欲が、飛田新地ではかなりくすぐられた。



風俗というとやらしいイメージはつきまとうが

ここ飛田新地は、なんというか、とてもきれいだった。

風俗サービスは古くから日本に存在するし、大正生まれではあるが飛田新地はその歴史をずっとそこに携えている。

どんどん開発されていく阿倍野・天王寺エリアの隅で、そこだけ風俗の歴史が生き残っている。

飛田新地という街は、風俗というものをすごくきれいでおもしろく見せる

まるで千と千尋の神隠しのような感じ。

階段を降りると、そこは不思議の街でした

みたいな。

この街は絶対に消しちゃいけない。

とくに責任感もなくそう思った。


それから、もうひとつ飛田新地のおもしろいところ

それは街中、男しかいないことだ(笑)

加えて、通りを車が頻繁に通る

彼らは車の中から一軒一軒店を覗いているのだ。

サファリパークかっ!

友人が飛田新地を「動物園」と表現していて、それはあまりにも失礼だろうと思っていたが……

その光景はサファリパークだった。


結局、その後スパワールドに宿泊して朝には京都に帰った。


天王寺は濃密な空気が漂う、素敵な街だ。

そして、新しく開発された街のすぐ隣に、古い街がひっそりと佇んでいる。

この空気のギャップがとても印象的でした。



ちゃんちゃん
















2012年10月1日月曜日

映画「コッホ先生と僕らの革命」、感想。


ずいぶん久しぶりに映画を見た。

はじめて京都シネマで映画を見た。

あのぐらいミニマルな劇場もよいなあ、と。


「コッホ先生と僕らの革命」
(公式サイト:http://kakumei.gaga.ne.jp/top.html

コッホ先生と僕らの革命














<ストーリー>
1874年、イギリス留学を終え、ドイツへと帰国したコンラート・コッホ(ダニエル・ブリュール)。とある名門校へ英語教師として赴任した彼は、授業の一環としてサッカーを教える。サッカーを通して、子どもたちはフェアプレーとスポーツマンシップの精神を学び、それまで抱えていた階級や国籍に対する偏見が少しずつ薄れていった。しかし、帝国主義下にあったドイツでは反英感情が高まっており、イギリスで確立されたサッカーは反社会的なものの象徴であった。地元の有力者やほかの教師たちは、コッホを学校から追い出そうとするが……。




簡潔に感想を述べるなら……(以下、一部ネタバレあり)





既視感のある展開だったが……よかった!

何が?


「サッカーは素晴らしい!」

とか

「学校教育は大切だ!」

とかじゃなくて



心がぐぁーっとアツくなる楽しさみたいなもの?

そんなものの前では、人間の関係はフラットに、みんな一人の人になる。

身分とか、貧富の差とか関係なく、だ。

劇中、いじめっ子(裕福な家庭)のフェリックスと、いじめられっ子(貧しい家庭)のヨストが、最初はバリバリのいじめ・いじめられの関係だったが、最終的には試合で抱き合って喜び合っていたのがとても印象的だった。

涙腺に震度4くらいの衝撃が^^;

(貧しくいじめられっ子のヨストが、メッシばりの切り込みを見せていたのには思わず笑ってしまったw)

そのような階級社会での生徒の身分差。

さらに、規律と統制でガチガチの帝政ドイツと、イギリスから来た自由なサッカーという摩擦。

このギャップや軋轢まみれの人間関係を、そのぐぁーっとアツくなる楽しさみたいなものが人々をひとつにする。

そういうのって、やっぱ、素敵やん、と再認識させてもらった。


これはサッカーに限らず、アートでも同じだ。

例えば、ブラジルのリオは住んでいる人の格差が大きい

しかし、カーニバルになると身分関係なく街がひとつになるそうだ。


なーんとなく、そういうことっていちばん大事だなあと、なーんとなく、しかし激しく感じた。




ついでに、

フェリックスの人間関係とそれに伴う心境も、興味深かった。

・ クラスのボスで陰湿ないじめっ子のフェリックス。新任のコッホに反発するが、次第にサッカーの魅力にとりつかれていき、やがてチームの一員に。

・ 強大な権力をもち、息子も服従させる父親をもつフェリックス。その父親に強制され、従い続けるが……

・ 家の使用人に恋をするフェリックス。身分違いの恋愛を父親に引き裂かれるが、黙って従うのももう終わりだ!このクソ親父!


といった感じで、

父親に従い続けるフェリックスが、やがて、父親とクラスメイトとの板挟みになるような状況になり、最後は、父親に反発し、仲間とのサッカー、恋愛という自らの意志に従っていく。

フェリックスがいろんなものと闘っていることがわかる。




ついでについでに、

この映画は19世紀末のドイツが舞台。

劇中に出てくる人の服装がみんなお洒落で印象に残った。

教育委員会の偉いおっさんも、学校の生徒も、工場で働く女性も、

みんなベーシックカラーに身を包み

それぞれ、いろんな形の襟をしたシャツや、ハンチング、チェックのベスト、革のブーツなどなど

この時代に当たり前だったファッションが、すごく新鮮に見えた。

これも、この映画の見所のひとつだと思う。


たまには映画を、それもミニシアターを見るのもいいなと思えましたっ。


ちゃんちゃん